江戸川乱歩「人間椅子」のあらすじとは?5分で分かりやすくご紹介します

江戸川乱歩の人間椅子 小説

それは、ただ、触覚と、聴覚と、そして僅かの嗅覚のみの恋でございます。江戸川乱歩『人間椅子』より

今回紹介するのは、変態すぎる&やばすぎると名高い『人間椅子

エログロ小説の代表作であるこの小説には、強烈なファンも少なくなく、あらすじを知っておくだけでも損はない名作です。

不思議で少し過激な江戸川乱歩の世界観をこの記事で知ってみていってください。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

江戸川乱歩とその作風

大人気コミック名探偵コナンの元ネタにもなっている”少年探偵団探偵シリーズ”で有名な江戸川乱歩。

彼が”少年探偵団シリーズ”や”怪人十二面相”などを書いた背景には、戦争による言論規制がありました。自分の好きな分野がかけないために、少年向けに小説を書いていたんですよね。

その規制がなされる前の作品で”人間椅子”、”芋虫”、”赤い部屋”はとくに色濃く乱歩らしさが現れている作品です。

主人公の佳子に届いた奇妙な手紙

これは恋する男のとある物語。

外務省書記官を夫にもつ佳子は、売れっ子の小説家でした。そんな彼女のもとには毎日手紙や葉書が届きます。佳子は小説を書く前に、お気に入りの椅子に座り、それらを読むのが日課でした。送られてきた封筒の一つに、何枚かの原稿が入っているのを確認した佳子。彼女はそれを手に取り、何気なく二行三行と読み進めていきます。なんとなく異常で、妙に気味の悪い予感をしながらも、彼女の好奇心でそれをどんどんと読み進めていきます。

実は、この小説の8割近くはその手紙の内容となっています

椅子職人

奥様、
奥様のほうでは、少しもご存じない男から、突然、このようなぶしつけなお手紙を差し上げます罪を、幾重にもお許しくださいませ。
こんなことを申し上げますと、奥様はさぞかしびっくりなさることでございましょうが、私は今、あなたの前に、私の犯してきました世にも不思議な罪悪を告白しようとしているのであります。江戸川乱歩『人間椅子』

そう始まる手紙。読み進んでいくと、この手紙の送り主は、”ひどく醜い容姿”で、”高級椅子をつくる職人”であり、”甘美で贅沢な「夢」に憧れている”ということが分かってきました。 そしてその椅子職人は、その夢をかなえるために自らが椅子になったことを告白します。

どうやって椅子のなかに入ったのか気になりますよね。本文を抜粋します。

それは、ごく大型のアームチェアーですから、掛ける部分は、床にすれすれまで革をはりつめてありますし、そのほか、もたれもひじ掛けも、非常に頑丈にできていて、その内部には、人間一人が隠れていても、決して外からわからないほどの、共通した大きな空洞があるのです。むろん、そこには頑丈な気の枠と、たくさんなスプリングが取り付けてありますけれど、私はそれらに適当な細工をほどこして、人間が掛ける部分に膝を入れ、もたれの中へと首と胴とを入れ、ちょうど椅子の形に座れば、その中にしのんでいられるほどの余裕を作ったのでございます。江戸川乱歩『人間椅子』より

さらに底には出入りできる扉をしかけ、椅子のなかには水や食料をおける棚をつくっていました。

人間椅子、恋に落ちる

さて、その椅子がどこに置かれたというと、外国人が経営するホテルのラウンジでした。そしてある日、この椅子職人はとある異国の女性に恋心を抱いてしまいます

人間椅子となっていた彼は、彼に座った人間ひとりひとりを容姿を見ずとも声や息遣い、肌触りや背骨の曲がり方、腕の長さやふとともの太さなどによってどんな人物なのか認識できるようになっていました。そこに運悪く座ってしまった異国の女性。彼はそのときの興奮をこのように書き綴っています。

これは実に、私にとっては、まるで予期しなかった驚天動地の大事件でございました。女は神聖なもの、いや、むしろ怖いものとして、顔を見ることさえ遠慮していた私でございます。その私が今、見も知らぬ異国の乙女と、同じ部屋に、同じ椅子に、それどころではありません、薄いなめし革ひとえ隔てて、肌のぬくみを感じるほどに密着しているのでございます。私は椅子の中で、彼女を抱きしめる真似をすることもできます。川のうしろから、その豊かな首筋に接吻するこもできます。そのほか、どんなことをしようと、自由自在なのでございます。江戸川乱歩『人間椅子』より
「椅子」という誰にも破られない殻をもったその男の興奮はとどまりません。
椅子の中の恋! それがまあ、どんなに不可思議な、陶酔的な魅力を持つか、実際に椅子の中へ入ってみた人でなくては、わかるものではありません。それは、ただ、触覚と、聴覚と、そして僅かの嗅覚のみの恋でございます。江戸川乱歩『人間椅子』より

ちょっとこの人危なすぎる……早く病院にいったほうが……。とも思うのですが、そこはホテルのラウンジ。運がいいというか、悪いというかそれ以上のことは男にできませんでした。また、絶えず宿泊客の出入りがあるため、彼の奇妙な恋も、時とともに相手が次々と変わっていくのでした。

止まらない想い

男がホテルで人間椅子を楽しみはじめてから数月か経ったとき、彼の身の上にひとつの変化が起こりました。外国人のホテル経営者が帰国し、代わりに日本人が経営者となったのです。その流れで男の椅子も売られることになります。

男は一旦、もう椅子からでようかとも考えますが、すぐ以下のように考え直します。

「外国人だけでは精神的に妙な物足りなさを感じていた。もしかすると、日本人は同じ日本人に対してでなければ、本当の恋を感じることができないのではあるまいか。そうだ、もう少し椅子の中の生活を続けてみよう!」

性懲りもなく、彼の変態性は底をついていなかったようです。苦笑

男のつくった椅子はそれはそれは立派なものだったため、売りに出され競売がはじまると、すぐに買い手がつきました。買い手は大都会に住んでいたとある役人でした。その役人はかなり立派な屋敷の持ち主で、男の椅子はそこの洋館の広い書斎に置かれます。その書斎は主人が使用するものではなく、その家の若くて美しい夫人が使用するものでした。

そしてすべからく、男はその夫人に恋をします。

私はどんなに彼女を愛したか、それは、ここにくだくだしく申し上げるまでもありますまい。彼女は、私のはじめて接した日本人で、しかも十分美しい肉体の持ち主でありました。私は、そこにはじめて、本当の恋を感じました。江戸川乱歩『人間椅子』より

男は、今までのように座った女性を感じるだけでは飽き足らず、どうにかして自分の存在を知らせようとします。夫人と顔をつきあわせて、話してみたいと思うようになったのです。
そこで彼がとった行動が「手紙を送ること」でした。

奥様、あなたは、むろん、とっくにお悟りでございましょう。その私の恋人と申しますのは、実はあなたなのでございます。江戸川乱歩『人間椅子』より

つまり、この男が恋をした夫人こそが、今、男から送られた手紙を読んでいる主人公の佳子だったのです。

そしてその手紙は、

もし、この、世にもぶしつけな願いをお聞きくださいますなら、どうか窓の撫子の鉢植えに、あなたのハンカチをおかけくださいまし。それを合図に、私は、何気なき一人の訪問者として、お邸の玄関を訪れるでございましょう。江戸川乱歩『人間椅子』より

と締めくくられ、終わっていました。

ネタバレとまとめ

当たり前ですが、もちろん佳子は男と会おうとはしませんでした。 手紙を読んだのち、佳子は青い顔をして立ち上がり、例の肘掛け椅子の置かれた書斎から逃げ出したのです。

実はまだ小説には続きがあって、最後に江戸川乱歩らしいトリックがあります。

佳子が居間に逃げ出したあと女中から男からの新たな手紙を渡されるのですが、そこには「実はあれは創作だった」という内容が書かれているんですよね。

乱歩らしい綺麗な終わりかたですが、読者によっては「 (人間椅子は本当の話で) その創作だったという手紙のほうが男の創作じゃないか!」と疑心暗鬼になってまうような安心感と不気味さが入り交じる終わり方です。

やはりこの作品が最も注目を浴びてるのは、この男の変態性ですよね。大人の男が椅子になり、その椅子の中で興奮しているのかと思うと、なかなかゾっとするものを感じます。

しかし『芋虫』もそうですが、一定層の性癖にささってしまうような乱歩の小説には多くのファンがいることは確かです。(不気味と思う人の方が多いと思いますが……)

本編は15分~30分ほどで読める短編小説です。リズムがよくすらすら読めるので空いた時間にサクっと読むのにぴったりのおすすめ小説です。ぜひ一度、怖いものみたさで読んでみるのもいいのかもしれません。
この記事で江戸川乱歩の世界観を少しでも感じていただけたら幸いです。

上記に紹介したものは、『人間椅子』の他に、『赤い部屋』『D坂の殺人事件』『芋虫』など名作がつめこんである神小説です。ぜひチェックしてみてください。

ご意見、ご感想ありましたらぜひコメントをお待ちしています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました